こんにちは、スピーチ講師の森川じゅいちです。
ただでさえスピーチするなんてイヤなのに、英語でプレゼンすることが決まったら「そりゃ無理!」って思いますよね。
今回はそんな時どうしたらいいかについて、その心構えと準備について体験談をもとに触れていきます。
これは海外旅行に行っても中学英語のカタコトしか話せない僕のレベルでもできた実践法です。
まずは「恥ずかしい思いをしたくない」「うまくやらなきゃ」「格好いいとこを見せないと」。
すぐにその考え方をやめましょう。
そもそも英語でプレゼンする時の「目的」が何なのか?
これを忘れてしまうと失敗します。
また準備にはゆとりを持つことが大切です。
さあこれを読めば英語プレゼンのハードルが少し下がります。
英語プレゼンは無理じゃない。聞き手を喜ばせたい気持ちが大切
英語でプレゼンする時の重要なポイントは、言語は違えど日本語でする時と基本が変わらないという点です。
つまりは「自分がよく見られたい」をなくし、「聞いてる人を楽しませたい」と思えれば取り組む姿勢が変わってきます。
そのために専門用語を一切使わず、中学で習う単語ばかりで話せば相手に伝わりやすくなるんです。
以下私事の事例になりますがしばしお付き合いください。
原稿作りに始まって最終的に本番で成功するまでの流れで書いています。
今からかれこれ20数年前、1990年代後半のことです。
僕は当時、スポーツチェーン店の統括バイヤーをしていました。
本店もオープンから年数が経ち、取り扱い商品もサーフ系カジュアルウェア、スケーターカジュアルに大きくシフトチェンジしたタイミングでした。
クイックシルバーやROXYといったブランドが大ヒットしたあの頃です。
店での取り扱い商品を大きく変えるため、店舗レイアウトと内装にも手を加え、リニューアルオープンすることになったのです。
リニューアルオープンの目玉は、セール2日目の日曜日に「1日2公演の店内ファッションショー」をすることに決まりました。
業者に頼んで本格的な仮設ステージと音響設備、そして舞台照明を設置してもらい、5人のストリートダンサーによるパフォーマンスをすることに決めました。
ダンサーにはサーフブランドのニューモデルのウェアを着用してもらい、音楽とブレイクダンスで演出してもらうというものです。
アメリカンブランドがメイン商品になるため、ショーのMCも英語でやったほうがいいだろうということになったのですが、なんと社長がプロのMCを雇う予算を考えていませんでした。
そこを自前でやらなければいけなくなったのです。
そうなると「社員の誰がMCやんの!?」ってことになります。
嫌な予感が的中しました。
とても自然な流れで管理職の僕がやらなければいけないことになったのです。
「まじかいや~!」
僕の英語と言ったら、ハワイに観光旅行に行くレベル。
中学英語をカタコトでしゃべるのが精一杯です。
ましてや英語のスピーチだなんて大学時代の授業で1分間スピーチをやったことがあるぐらいなものです。
そんな低レベルで英語MCをするなんて荷が重すぎました。
もちろん仕事なので、失敗しても”笑ってご愛敬”では済まされません。
しかもリニューアルオープンまでは約1か月。そんなに時間の猶予はありません。
改装とはいえ店舗は通常営業中だったので、日々の業務で時間だけが流れていき、それとともに焦りがどんどん募っていきました。
まずは台本(原稿)を作らなきゃっ
いよいよファッションショー2週間前に迫った時、これじゃやばい!とお尻に火が付きました。
当日パフォーマンスをしてくれるダンスチーム5人に来店してもらい、着用するウェアとショーの段取りについて打ち合わせをしました。
まずは日本語で台本を作らねばなりません。
ショーでは5人のダンサーそれぞれのソロパフォーマンスもあるので、彼らの経歴についても雑談を通してじっくりヒアリングをしました。
5人の個性をアピールするためにも個別に聞いておかないとそのキャラクターを伝えられません。
これをしっかりやったことで彼らとのアイスブレイクができ、またそれぞれの性格がなんとなく分かったのでとても有意義でした。
次にショーで紹介するブランドの背景をまとめねばいけません。
時は90年代、まだまだガラケー全盛期です。
”グーグル先生”の存在も一般的には知られていない頃です。
そこで雑誌やメーカーからの情報をかき集め、ブランドの歴史と特徴だけはしっかり理解せねばと考えました。
日本語での台本はなんとか完成したのですが、これを英語に変換しなければいけません。
もちろんパソコンはあっても、インターネットがまだまだ未熟な時代です。
学生時代に使っていた英和・和英辞典を引っ張り出し、すべてを英語に変えました。
この時初めて受験勉強で英語学習したことが役立った気がしました。
まんざら日本の大学受験の勉強も社会に不要なわけではなかったのです。
英語の原稿作成で一番気を使ったことは、”聞くのは日本人である”ということです。
ですから、だれでも理解できる中学校で習う英単語のみを使うことを意識しました。
ココがポイント
発音に困った!
いざ台本はできたものの、その表現自体が正しいか不明です。
しかも一番のネックは発音がメタメタなことです。
店頭に来られるお客さんがターゲットとはいえ、あまりにもへたくそな発音では体裁が悪いです。
「そんな下手な英語で格好つけてしゃべるなら、日本語でやれよ!」と言われないためにもなんとかしないといけません。
発音をアドバイスしてくれる外国人の友達もいないのでどうしようかと焦りました。
しかしその悩みはすぐに解決することになります。
なんと部下の女性がグアムに住むホテルマン”ボブ”と超遠距離恋愛をしていたのです。
まずはMC原稿を彼の勤務先にFAXして(笑)、英語表現があっているかチェックしてもらいました。
するとすぐに添削原稿がFAXで返信されてきました。
「おー、シンプルでわかりやすい英語表現になっている!」
さすがはネイティブです。
すぐに原稿を変更して完成させました。
次に、ボブのホテルに国際電話をかけて電話口でその原稿を読んでもらいました。
オフィスの電話をオンフックスピーカーにして、そのそばに「ポータブルカセットレコーダー」を置いて録音したのです。
ボブは日本語がしゃべれますが、なんと電話口で母国語の英語を読むのに緊張して、何度か録音し直したのを覚えています。
さあこれで、今でいう「音声メディア」が完成しました。
僕はMC本番までこのテープを何100回聞いたかわかりません。
すると驚くことに、ボブが発音するようにしゃべれるようになったのです!
ココがポイント
そんな外人の知り合いなんていないわ、ってことにもなりますが、今やインターネット全盛時代。
WEBサービスも充実するようになりました。
例えばスキルマーケット「ココナラ」などを利用して、低料金であなたの英語原稿を助けてくれる人を探しましょう。
いよいよダンスショーがはじまる
当日は絶対に緊張します。
そこで前日夜の営業終了後にステージで何回もマイクのテストをしました。
場慣れだけは完璧にしておきました。
さあ翌日の日曜日になりました。約20分のショーは、午後1時と3時の2回公演です。
朝から緊張して昼ごはんはほとんど喉を通らず、開始10分前になりました。
心なしか舞台袖で待機しているダンサーさんたちも顔がこわばっています。
彼らも人前で踊り慣れているのに緊張するんだな、とこちらも少し安心しました。
店内はリニューアルセールの広告効果もあってお客さんも大勢来店されています。
さらにはステージの周りには100人以上のお客さんが今か今かと待っていてくれています。
午後1時ちょうど。
大音響の音楽ときらびやかな照明が光りだし、ダンスショーがスタートしました。
ボブが添削してくれたMC原稿をお守りとして手に握りしめ、声を絞り出しはじめました。
あっという間に20分のショーが終わりました。
そして観客から大きな拍手をもらうことができたのです。
ステージを降りて店のバックヤードに戻った時に、ダンサーメンバーとハイタッチをして喜び合いました。
達成感と充実感で心が満たされた瞬間です。
最初はどうなるかと思いましたが引き受けてよかったと思えました。
2回目にはもっと驚くことが起こる
さて2度目の公演時間が近くなってきました。
そうするとまた緊張は高まってきますが、1回目と違うのはショーに対しての「高揚感」が芽生えていました。
受け身ではなく、なぜだかワクワク感が生まれてきているのです。
ダンサーメンバーたちも1回目の緊張感のある表情はすっかり消え、「やるぞ」という意気込みが伝わってきます。
誰が言い出したわけでもなく我々店舗スタッフと自然に「円陣」を組んで掛け声をしたのはびっくりしました。
午後3時。
1回目よりもお客さんが増えています。
再び胸に響く重低音の音楽と七色の照明が光りだし、ショーがスタートしました。
全く同じ内容でも2回目になると、MCをしながらダンサーの動きにももっと注目できるようになります。
すると話すタイミングと間の取り方が「絶妙」によくなってくるのです。
しかもダンサーがパフォーマンスをしやすいように話すことも可能になってきました。
さらには、観客の注目の仕方に合わせて、声のトーン変化も入れられるようになったのです。
そうなると音楽・照明・ダンス・MCに一体感が生まれ、話しながらどんどん気持ちよくなってきたから驚きです。
いわゆる「ゾーンに入る」経験ができてしまったのです。
こうなるともはや止められません。
台本通りにしゃべるのではなく、あえて繰り返し同じ言葉を表現するなどアレンジまで生まれてしまったのです。
そして1回目よりも大きな拍手をもらい、大盛況で終わることができたのでした。
英語でのプレゼンから得た大切な5つのポイント
この経験を通してわかったことは、日本語も英語も「言語は違っても、プレゼンの根本は変わらない」ということです。
事前に何度も練習することで話し方は上達してきます。
しかも今回の場合は、ボブの肉声をテープで何100回も聞いたことで、原稿内容が耳から完全に脳に刻み込まれていたことです。
一夜漬けの勉強のように記憶したのではなく、耳からしっかりインプットした情報になって自然に口からこぼれたといっていいでしょう。
部下がアメリカ人ボブと付き合っていなかったら成功していなかったかもしれません。
ただただ感謝感謝です。
▼しかもビジネスパーソンとして働く上で、以下大きな意義を持つものになったのです。
- セールが成功(店の売上がアップした)
- 店舗スタッフのモチベーションが上がった
- 管理職が率先して取り組んで、部下にやり方を伝えられた
- 部下の信頼を得られた
- 話題を提供でき、その後来店客が増えた
まとめ
リニューアルの1か月前に英語で話さねばならなくなった時は、本当にどうしようかと困りました。
しかし、うまく乗り越えなければならない「自分のため」というよりも、すべては「見てくれるお客さん」に喜んでもらうことが一番の目的であると視点を変えたことで、取り組む姿勢が変わってきました。
単にダンスに合わせてしゃべるだけであれば盛り上がりにも欠けていたでしょう。
その上で大切なのは、
step
1原稿は中学レベルの単語を使い、専門用語は多発しない
step
2何度も事前練習し、本番の環境にも場慣れしておく
step
3同じスピーチを複数回行う場合は、2回目以降は格段に上達する
これって英語のスピーチだけじゃなく、営業や開発部隊で働いている人が社内外で日本語プレゼンする時と一緒じゃありませんか?
専門用語を使わず相手にわかりやすい言葉で話し、事前に何度も練習して場慣れすれば、回を重ねるごとに上達していく。
全く同じですね。
あなたがプレゼンで達成感と充実感を経験することができれば、確実に会社での立ち位置(ポジション)は変わってきます。
そのためには相手に「伝えたい、喜んでもらいたい」という気持ちが原動力になるんです。
もしあなたが英語でプレゼンすることになったら、そんなことを参考にして乗り切ってほしいものです。