こんにちは。スピーチ講師の森川じゅいちです。
あなたは即興トークは得意ですか?
う~ん、なかなか得意な人って少ないですよね。
さて先日、スピーチが苦手だったけど練習して上手くなったNさんと話す機会がありました。
そのとき彼は「事前に設定されたスピーチより、即興でやる方が気楽でいい」と言っていました。
なぜなら「事前に考えてくるスピーチは、覚えていたことが飛んでしまったらそれでおしまい。しかも暗記したことを話すからどうしても棒読みになる」。
また「自然体になれる即興のほうがいい」と”即興のすすめ”を熱く語ってくれました。
でも誰もがNさんのようになれればいいですが、そうは簡単にはいきません。
ということで今回は、突然スピーチをしなくならなくてはいけなくなった時、どのようにしていったらいいかをお伝えします。
以前より即興スピーチに対応できるようになりますよ。
アドリブで即興スピーチする時のコツはどうしたらいいのか?
冒頭で紹介したNさんは、「突然振られたトークはできなくても当たり前。聞き手からも大目に見てもらえるから、ハードルが低くなる」とのことでした。
う~ん、たしかにスピーチを克服してとても頼もしい発言なんだけど・・・。
分かるような気はするんだけど、スピーチが嫌であがってしまう人にはちょっと理解しがたいかもしれません。
自然体になって自分を出せる人はいいですが、それが簡単にできたら苦労しないですよね。
僕自身も過去にあがりを克服したとはいえ、今でも突然の無茶ぶりスピーチはイヤです。
会議中に突然意見を求められる時や、飲んだ席での締めのトークならまだマシです。
その時は、思いついたことをそのまま伝えればいいですし、定例的なあいさつはだいたいが話す流れが決まっているので、状況に応じて話せば大丈夫。
しかし大勢の前で急に「何か話をしてください」と、話すお題をその場で考えなければいけない”即興スピーチ”は、異常なまでに緊張します。
即興スピーチが全く上手くいかなかった悲しい過去がある
僕は大学卒業後の入社一年目、人事部に所属していました。
7月のある日、来年の新卒採用のため上司と新宿の専門学校に行って、学生相手の「会社説明会」を手伝う機会がありました。
最後の質疑応答までが終わった時、上司が突然「就職活動をする学生の皆さんに、年齢に一番近い新入社員の君から我が社のアピールをしてください」と僕に無茶ぶりしてきました。
もちろん事前にスピーチが振られることなど聞いていません。
専門学生50人の前で突然話せと言われても、何を話していいかかわからなくなり大量の冷や汗が出てきました。
いざ話し出してもまとまりがつかなくなってしまい、しどろもどろになった経験があります。
冒頭のNさんのように「できなくても当たり前、大目に見てもらえる」、そんな状況ではありません。
ましてや自然体でなんていられるわけがなかったのです。
年下の学生を目の前にして、「我が社に応募してくれるようカッコいいとこ見せなきゃ」と思えば思うほどドツボにはまりました。
突然指名されて、話したいことを即座に頭の中でまとめ上げることは難しいですし、話すためには必ず準備時間が要るのです。
管理職が即興スピーチを求められる時
置かれた環境や場面によって、即興スピーチの緊張度は変わってきます。
僕は、気の知れたメンバーや少人数では苦にはなりません。むしろ即興の方が話し方が自然になります。でも突然、大人数の前でやれと言われたらそりゃ焦ります。
事前準備の時間がないと自信が持てません。
あなたも年齢とともに管理職になって、それなりのポジションになってくると、公式の場で無茶ぶりスピーチを要求される機会は減ってきます。
ですから安心してください。
大事な場面でスピーチする機会は、たいていは前もって依頼されます。
ですから心の準備はできるのです。
それでも異例の事態はある
しかし、キャリアとともに以下のようなイレギュラーのケースが出てきます。
「結婚式当日、主賓挨拶を代役で頼まれた・・・」
「ボスの代役で挨拶を依頼された・・・」
「部下が病欠し、代わりにプレゼンしなければならない・・・」
あなたがやる予定にもなかった、まさかの「代役」。ビジネスにおいては管理職が代役をこなすことが求められてきます。
スピーチが嫌な上に、本人に代わって話さなければいけない。焦りがつのります。
その時の対応策
無責任な言い方ですが、まずは開き直っちゃいましょう。もうどうしようもないわけですから、気持ちの面でまずはそのことを受け入れるべきです。
そして頭の中で何を話したらいいか考えて、整理しなければなりません。
ポイントは、
「代役であっても、今あなたにできるベストのことをする」
「話す直前までできる準備を最大限する」
そして最も大切なのは、
「代役ではなく、もともとあなたが話さねばいけなかった、と考え方を変える」
「誰かの代役を演じるのではなく、あなたらしさを出すこと」
考え方ひとつ変えるだけでスピーチが変わってきます。
即興スピーチを成功させるコツは、前の人のスピーチに集中する
それでも状況によっては即興トークをうまくできる方法があるんです!
例えば順番で何かを話さなくてはいけなくなったケースがあったとします。
迫ってくる自分の順番に焦ってしまうと、頭の中で自分の話す内容をまとめられなくなります。
しかも前の人の話を無視して考え込むわけにはいけない。
そんな時は、前の人が話すことを聞くことに徹しましょう。
そうすると前の人が話したことをもとに、話題が見つかったりします。
いわゆる前の人に「乗っかる」ことができるんです。
「〇〇さんの話はとても良かったですね。実は私も××といえばこんなことがあったんですよ・・・」というように感想を述べるだけでも立派な即興スピーチに早変わりです。
しかもあなたは人の話をちゃんと聞いていると認められ、あなたが話す時も聞いてもらえることになります。
即興に困ったら、焦って考えても頭に浮かびません。
前に話す人に集中しましょう。乗っかりポイントを探すんです。
スピーチは、話す内容をインプットして覚えておくことも必要
冒頭でご紹介したNさんは、「事前に準備したスピーチは、覚えていたことが飛んでしまったらおしまい」とおっしゃっていました。
また「暗記すれば棒読みになってしまう」とも。
スピーチは、原稿に書いた通りに一言一句間違わないようにしゃべろうとするから無理が生じます。
ですからスピーチ原稿を丸暗記しようとする行為が、そもそもの間違いであると思います。
だいたいのストーリーが頭の中に入っていればいいんです。
一方、即興スピーチが難しいのは、とっさに話すネタがすっと浮かばないことです。
ですから日頃から話のネタは常に探しておき、ネタを見つけたら自分の手帳にしっかりと書いておきましょう。
それが習慣になれば、かなりの量のネタが集まります。
即興スピーチにこれらのネタは大変有効です。
ですから、時折ノートを見返して、いつ即興を求められてもいいように、話す内容をインプットして覚えておくことも必要ですね。
【まとめ】結局のところ即興スピーチのコツは準備が大切
スピーチの代役を頼まれても、それを他人のせいにするのではなく、すべてひっくるめて「自分事」として受けとめる姿勢が必要になってきます。
即興スピーチは、最高難易度のコミュニケーションです。話のうまい人でも苦手な人が多いです。
それができる人は、普段からもネタ仕込みをして、頭の引き出しに準備しているからできるのです。
料理に例えるなら、「仕込み」にあたります。段取りよくおいしい料理を作るのには下準備が欠かせませんよね。
結論から言って、即興トークはできなくても構いません。
よっぽどのことがない限りビジネスパーソンには必ず必要なスキルではないと思います。
ただしキャリアが上がるにつれ、人前で何かを話す機会は増えてきます。
そんな時のためにちょっとした小ネタをいくつか用意しておいたほうがいいでしょう。
しかもあなたが偉くなればなるほど、即興の無茶ぶりは”あなたにとって失礼にあたる”ので求められません。
前もってスピーチの打診があるので、それまでに考える時間はしっかりあるのです。
時間に余裕を持つことの大切さ
デキるサラリーマンは朝の時間活用がうまく、出社も早い傾向があります。
約束時間にしてもギリギリではなく早めに現れます。
突然、仕事の代役を頼まれたとしても、時間ギリギリの人に比べて余裕があるため準備の時間に充てられます。
また、ちょっと気の利いた話題が必要であっても、そういう時のために話す「ネタ帳」を持っているので対応に困りません。
日々の情報収集は大切です。
人間は、すぐに忘れてしまう生き物なので、何か新しい気づきや発見があった時は、日々スマホにメモしておきましょう。
それがどんどんストックされていけば、のちにスピーチネタとして大きな財産になるのです。
【追記】スポーツ中継でアナウンサーの即興トークには秘密がある
スポーツの実況生中継。
見たまんま視聴者にわかりやすく情景をうまく伝えてくれます。
あらためて即興できるアナウンサーってすごいですよね。
彼らによるとその場で思わず発する言葉というのは、結局はその場でしか浮かんでこないのだそうです。
しかし実況アナウンサーは出場選手の出身地にはじまり、性格、体調、得意技、過去の成績などを事前に調べて頭の中に叩き込んでいます。
試合会場やコースのレイアウトについても同様です。
仕事とはいえ、そのスポーツに興味を持って自分事にしているのです。
そこまでしているからこそ、思わず発する言葉が浮かぶのだと思います。
2006年トリノオリンピック・フィギュアスケート女子シングルで、荒川静香さんが金メダルを取った時の実況アナウンサーの言葉は有名です。
「トリノの女神は、荒川静香にキスをした!」
刈屋富士雄(アナウンサー)
名物実況・刈屋アナは、荒川選手が金メダルを取った時に何を言うか、丸一日ずっと考えていたそうです。
すべては事前準備あっての本番の言葉ですね。